P10


10.Motymo 様  
  このスピーカーシステムは、フォステクス社主催の自作スピーカーコンテストにおいて、優秀賞を受賞されました。

 Primula

 1)システム概要
  トゥイーター   : Beyma社 T2030 ハードドームツイーター
  ウーファー    : DCU-F131PP
  BOX       : バスレフ(容積15L)
  吸音材      : グラスウールとニードルフェルト
  ネットワーク仕様:-18dB/octスロープの3kHzクロス

 2)前書き
 今回のスピーカー「Primula」は、私自身が大学で学んでおります電気電子工学を趣味のオーディオに生かしたいと
 思いまして製作に至りました。
 本当に勉強になることばかりで新鮮でして、自作スピーカーは他社さんになりますが、FE-83Eを使いまして、
 いくつも箱を作り自作スピーカーを楽しんでいました。今回の様なマルチウェイというのは実は、恥ずかしながら2代目でして 
 恐れ多くもコンクールの方で入賞させて頂くことが出来、びっくりしている次第であります。

 私も工学を専攻する端くれですので、理想的な動作を求め測定を主とした製作を行いまして、
 測定、調整、試聴の流れを何度も繰り返し製作を行いました。 殆ど聴感でのセッティングは最後の最後
 コンクールに応募する直前に、少し調整する程度行いました。

 測定で作り上げられたサウンドは無機質な物か?と言いましたら、面白いことに出来あがった音は非常に気持ちがよく、
 繋がり、バランスが取れたサウンドで声の表現や弦の擦れる感じなど良く表現出来ていたと思いました。
 凄く温かみのある音でスピーカーの見た目、思想とは真逆を行く面白いスピーカーとなりました。

 3)ネットワークやシステムチューニング等について
 私は、15Lと推奨箱と同じくらいの容量の箱のポート共振周波数を最初は67[Hz]程度に設定しまして、
 その後ParcさんのBlogでも書かれていますように無理にポート共振周波数を下げず、量感を出した方が生かせると思いましたので
 箱に収めたインピーダンスの峰を見まして、少しづつ切り詰めながら最終的には山の高さが揃う位までfdを上げる形になりました。
 ちょっと共振周波数が高すぎるかな?とも思いましたが、非常に音の離れが良くなりまして、これが軽量振動板の音かといった感じ
 になりました。

 ツイーターと のクロスは131PPの中域を生かしたかったので3[kHz]付近と若干高めに設定しました。
 ネットワークの構成としましては、所謂3次型のネットワークです。
 今はSpeakerWorkshopという便利なソフトを使う練習をしてますが、このスピーカーを作っていた当時はその知識が無く
 回路定数を計算し、素子をとっかえひっかえして測定してを繰り返していて文字通りのカットアンドトライとなりました。

 細身のブックシェルフスピーカーとなりましたので、そのままでは低音が寂しいですので、
 ちょっとイレギュラーと言いますか、怒られてしまいそうなのですが、WOに対してLとRを並列接続したフィルタを
 直列に入れさせて頂きました。折角のフラットな131PPの特性を生かしつつ100[Hz]より下辺りから少しづつ持ち上げる
 様な形のバッフルステップコンペセータをネットワークに入れています。
 クロスオーバーはフラットになるようにネットワークは組みましたが、若干TW側の方のスロープの方が急峻でWO側がなだらかと
 ちょっと変わった感じになってしまった様に思われますが、これもまた良しかなと思います。

 また吸音材をグラスウールとニードルフェルトを適所使い分けて、低音を若干沈むような挙動の音に仕上げました。

 4)感想
 DCU-F131PPは、フルレンジ型として販売されているだけあって、とてもフラットな特性でして、それでいてパサつきなどは一切無く
 ボーカルがはっきりとしていて、目の前で歌っているような感覚で口の表現、繋がりと伸びは特筆すべき物だと思います。
 ウーファーとして使うには、少し低音が少ないかなと思う点もありますが、そのあたりは箱やネットワークで工夫すると良いかと思います。

 個人的にDCU-F131PPは、重低音は出ませんが 反応の良い適度な柔らかさの低音。
 そしてフラットで癖のない中音域、艶のある女性ボーカルの表現が大変良く、かといって厚過ぎて詰まったりすることなく 
 軽く伸び爽やかなサウンドでボーカルが心に響き、皆さんが仰られるようなPARCサウンド、といった感じだと思います。
 個人的にはフルレンジに使うには少し上が足りないのでそこをTWで足してあげると良いかなと思います。
 使い方次第でこの程度ではなくもっともっと伸びる、大変面白いユニットだと思います。