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5.ロベルト・乙様(東京都在住)

1)新エンクロージャー製作の契機
 平成26年6月初旬の或日、不幸にもDCU-C131W一台のTW部が壊されるという出来事がありました。
 不幸中の幸いで代表のご厚意 からTW部のみの交換修理は可能と言う事でコアキシャル2台は使えるように
 なりましたが、今後の事故再発防止を考えて新たにエンク ロージャーを製作する事にしました。


2)製品の所感
 壊れたウーハーの後継機選択には、他メーカー含めて製品選択は迷ったのですが、
 アルミコーンウーハー(DCU-171A)を購入してみました。
 ウーハーとしてならば(13センチに比べると一廻り大きいので選定できる要件が整えばですが)
 17センチユニットの方が良いですね。
 空気振動の違いを感じます。しかしながら組み始めるとかなり調整が難しいユニットとも思います。

 DCU-C131Wも含めて、仕事上でお世話になっている某設備音響屋さんに頼み、
 個々の簡易特性チェックを御願いしてから組み始めました。
 音響屋さん内では評価は 分かれましたが、小生としては思っていた以上に裸特性が素直なユニット達で、
 民生用途機器としては価格が比較的安価(最近は価格上昇中ですが)でありながら
 パフォーマンスを伴う製品を提供されているかと思います。

 ときにC131Wソフトドームトゥイターの真鍮製切削フレームが時間とともに錆びて輝きを無くしてきており
 外観悪化をどうしたものかと(笑)。
 聞き及ぶ処によれば、アルミコーンウーハーの2種は既に生産完了との事らしく、
 今回レポートを起こしましたが今後は入手困難が想定され残念な気もします。


3)スピーカーシステム組配構成 
 新作エンクロージャー(記憶が正しければ16作目) 1組 防護ネット付属
 作品名:-昭和風レトロチック- ぢぢいの音箱

 板材:シナ合板ベニヤ 板厚21mm、補材板厚9mm
 外形:280(W)×520(H)×280(D)mm 容積23L
 前面バスレフ型 ダクト共振周波数41Hz、54Hz
 吸音材:サーモウール
 コルク板材(フロントバッフル外面/外観意匠含)
 

 図面はこちらから。(2Pあります)


4)スピーカーユニット部品
 ウッドコーンコアキシャル(DCU-C131W) 2台
 アルミコーンウーハー(DCU-171A) 2台
 M社28mmソフトドームTW 2台
 

5)電子部品
 ロータリースイッチ、コイル、コンデンサー、抵抗器、配線材・端子台等 必要量
  

6)ユニットの鳴動構成
 a: DCU-C131Wコアキシャル型2WAY
 b: DCU-171Aと単独TWとの2WAY
 c: DCU-171AとDCU-131Wでの2WAY
  

7)ユニットシステムの試験調整音源機器等
 1: CD (Audio/Acoustic Technical CD for Professional use)
 2: アナログチューナー(TRIO model KT-7500)のFM/AM音源 
 3: デジタルアンプ(某雑誌付録)頂きもの
 4: オシロスコープ&スペクトラムアナライザ&測定マイク(一時的借用)
  

8)パッシブネットワーク構成
 1:2WAY回路構成としてコアキシャル用
 2:2WAY回路構成としてウーハー/ドームTW用
 3:2WAY回路構成として171A/131W用
 4:3WAY回路構成

 回路図はこちらから。
 

9)雑言
 久方ぶりの新箱設計をどうするか?
 新しくウーハー投入を考えるならば別途にウーハー対応用のTWを用意すれば良い。

 それならばD CU-C131Wは別BOXで仕上げて、もう一つ別に2WAY用BOXを作るかと考え、
 図面作成して交渉するも2ペア4台の製作は不許可でした。

 1BOXで再設計し直したものの、大きすぎると言うことで更に2度の変更。
 4度目の外観設計(今回製作の原案)でOKがやっと出 たという苦しい状況下での設計製作なのでした。

 小生の場合、新箱製作を始めるといつも数回の作り直しを行いますので、埃も出るし材料が散らかり放題
 となり良い顔はされません。
 塗装も予定していたラッカー仕上げも不可となりまして(明確な理由は不明)、乾燥までの時間が大幅に
 掛かる状況になり、塗装中「シンナー臭い」とずっと云い続けられ・・・とても気を遣いながらの作業でした。

 しかも完成後外観 意匠が気にいらないと邪魔物(ゴミ)扱いです。外観意匠って重要なのです。
 専用ルームの所持や、製作保有個数外観制限を受けない自作派諸兄が羨ましい限りです。

 1BOXに2WAYシステムの2セット入りという苦しい基本設計なのですが、試作中171Aとウッドコーンとを
 合わせて鳴らした処この組合 せも捨てがたくなり、結局欲も出てきて電子回路設計を複雑化させました。

 前回の配線組配からロータリースイッチで回路を変更するという、恐らく諸兄からはノイズ・音質低下の原因
 と指摘されうる方法を行っていますが、私的には「切り替えが楽だし自作の醍醐味」と考えての手段です。

 171Aと併せるTWは当初御社製も検討したのですが、3製品購入検討で他社1製品の選択としました。
 今回は特にネット ワーク設計上で問題点もなく、最終的には測定器を睨みながらのユニットへの制振材の
 適用調整、吸音材の調整、電子部品の集合体をエンクロージャー内に納める方法に手を焼いた状況でした。

 C131Wの調整時、前の箱使用時と聴感の違いが大きく判断を迷ったため131W推奨箱を1台だけ作り
 参考としました。フルレンジ仕様と推奨NWを介しての双方の鳴動を確認しましたが、再生音域のバランスが
 良く、小生の判断を決定する要素としては充分な推奨箱でした。

 とはいえC131Wの調整は思いの外難航しまして、171A振動板とエ ッジがドロンコーンの如く作用をするらしく、
 171AはHP上に推奨BOXが掲載されてなかったので、製品の記載物理データを目安に仮箱 から作って
 いきましたが、中低音の聴感違和で基本設計からは大きく2回内部構造を変更、C131Wの取り付けにあたり
 補強材付加の 必要性とバスレフポートの設計変更までも含む、結果約2ヶ月半を超える仮箱製作に陥った
 のでした(それはそれで実に楽しかったですが)。

 完成型ではベニヤ材からメープルムク材に変更したかったのですが許可が出ませんでした(笑)。
 完成品はベニヤ材で安っぽい仕上がりです。突板仕上げも考えたのですが、小生が自宅で作業して
 上手く処理できる訳も無く、結局無難な塗装仕上げにしました。

 フルレンジ嗜好の諸兄はネットワークを使わないでしょうが、パッシブ設計では電子部品を箱内に押し込む場合
 「何処に置くか?」という考察で悩む場合もあります。

 今回は2WAYの2ペアで音を出しながらの測定調整を行ったため、その電子部品の多さから
 「箱の何処にどのように配置するか」が組立調整時の懸念になり、最終的には「引き出し型」というスタイルで
 ターミナル端子を含めてパーツを一括で箱として脱着できる構造にしました。

 合板も状況によっては反りも出るため構造を配慮しないと音漏れの原因になる場合もあります。
 しかしながら、保守性も含めて自作箱での一つの方法としては面白いのではないかと考えます。

 仕上がったシステムはパッシブネットワークとして内蔵していますが電子部品代もバカにはならず、
 近年主流の「小型化、フルレンジ嗜好」は自作する立場 から改めて考えると止やむない事かなと
 納得もする小生です。

 気合い入れて製作したユニットシステムですが貰い先が既に決定していまして平成27年初夏頃、
 残念ながら小生の手元を離れていく予定です。


10)普通のアンプで鳴らしてみての所感
 愛機パワーアンプMC240で鳴動させての所感ですが(2〜5W程度出力)、遜色なく聞きやすいです。
 リビングでのテストを行っていて、昨年小生の愛機タンノイ・エジンバラが壊された以降、
 興味を示さなかった家内が耳を傾け「まあまあの音」との評価を出した辺りでは、音の作り方は異なりますが、
 まずまずの出来上がりなのかとも考えています。

 F特実測値もまずまずですが、一般住宅での特性チェック値はほぼ参考にはならないでしょう。

 DCU-C131Wのコアキシャル2WAYは前箱より聴感が幾分良くなり、TWの指向性が若干強い感じもしますが
 近距離での一点音源が心地よく、低域再生の聴感では17センチアルミウーハーを凌ぎ、柔らかい細やかな
 聴感です。比較試聴する事で判るのですが、この柔らかい音は好みの分かれる所でしょう。
 聴くソース,ジャンルによっては合わない、物足りない感覚が生じます。

 アルミコーンウーハーの2WAYは以前より低音域再生で音圧を感じるようになり、野太いという音ではないですが
 音色も多く明瞭度が高い締まった低域の再生音です。TWもウーハーと同等の解像度を有し、中高域を担当する
 音像はウッドよりも多少前に出る感じの定位でやや強めの切れが良いパワフルな感覚の再生音です。

 ウッドとアルミウーハーの組み合わせは低域の締まった再生音とウッドフルレンジの中高域の柔らかさが相まって
 心地よい聴感です。バスレフ設計のエンクロージャーですが密閉方式で鳴動させると音像が締まる聴感があり
 比較試聴するとまた異なる趣があります。
 いずれにしても御社コンセプトの上で上手く差別化された商品であろうと思います。
 現在エージングが収束 しつつ、本ユニットシステムは主にAM/FMのラジオ放送を心地よく響かせています。