スピーカーエンジニアって

2008年02月05日(火)

一言でスピーカーのエンジニアと言っても、大手メーカーではスピーカーユニット担当キャビネット(主に木工)担当、ネットワークを含めたシステム担当という分担で設計を行うのが一般的です。これに飾り部品等の大型成形部品がある場合はメカ担当がさらに加わります。

では私の場合はどうかというと、30年近い設計経験の中でおおよそ7割以上をスピーカーユニットの開発や設計に携わってきました。このスピーカーユニット担当というのは、そのスピーカーを設計する場合に一番基本となる事は言うまでもありませんが、一般的にその商品企画のスタート以前からいろいろとネタを仕込んでおく必要があり、設計の中でも開発設計という色合いが強いものです。

ここまで言うとすごくかっこいい感じもしますが現実はその逆で、あくまで私見ではありますが、
ある意味でスピーカーユニットエンジニアほど可哀想なオーディオエンジニアもいないのではないかとも思っています。
その理由は・・・・

スピーカーを含めいろいろなオーディオ関連のエンジニアをやっている方は、当然ながら音楽が好きな方がほとんどだと思います。ところが、開発中のスピーカユニットは本当に聴くに耐えないようなひどいものも結構あり、開発から設計完了に至るまでの間でこのひどい音を延々仕事として聴いていかないといけないのがスピーカーユニットエンジニアなのです。

ちょっと話はそれますが、スピーカー自体が数あるオーディオ機器の中でも、ある面で最もレベルが低いカテゴリーとも言えるのです。なぜなら、他のCDやアンプ等は1万円の超安価なモデルでも周波数特性がフラットなんて言うのは当たり前ですが、100万円を超えた超高級スピーカーでも周波数特性がフラットというモデルは先ずありません。

またスピーカーというのは本来入力信号である音楽信号を人間の耳で聞こえるような音響エネルギーに変換する変換器なのですが、この変換効率も他の変換器に比べて極端に悪いのです。例えば一般的なスピーカーではその変換効率はたった数%程で、他のほとんどは音ではなく熱に変わるのです。言ってみればスピーカーは音の出る電気コンロと言った方が正しいのです。

それだけに開発初期のスピーカーというのは、本当にひどいものも少なくありません。そして数あるひどい試作品の中からだんだん完成度を上げ、やっとシステムとして調整をできるレベルになったところでシステム担当者にシステム調整を任せるので、スピーカーユニットエンジニアが完成された状態の音を聴く期間は非常に短いのです。そして、また次の新しいユニット開発がスタートし、また同じ繰り返しが・・・・・。



ちょっとネガティブな事を書きましたが、長年スピーカーユニットの設計をやっていて、この仕事も捨てたものでもないなぁとつくづく思うこともあります。それは、やはり開発が終わって本当に自分の満足した音が出た瞬間です。これは何物にも代えられない喜びです。もちろん、自分の作品をユーザーの皆さんが喜んで使ってくれているのを知った時もやはり最高の瞬間です。

スピーカーユニットは高だか20点前後の部品で構成されており、それだけに各パーツの影響も想像以上に大きく、また電気部品でありながら、接着剤や紙からプラスティック、金属に至るまでいろいろな材料のことについても知識を要求されます。本当に広く深くという事が要求される奥の深いカテゴリーだと思いますし、それだけにやりがいも多いのです。これからスピーカーのエンジニアを目指そうと考えられている奇特な方がもしいるなら、私は声を大にして言いましょう。

「この仕事は本当に大変ですが、一生をかけるだけの価値は十分にありますよ。」 と。 

でも音楽が好きだから、仕事で音が聴けるからなどと単純な発想で始めるなら、今のうちに他の仕事を探した方がベターです。 ちなみにソニー時代には、仲間から「トキ」と言われていました。理由は、スピーカーエンジニア(特にユニットエンジニア)は非常に貴重で絶滅寸前だから、みんなで大切にして保護しなければいけないと・・・。

この記事へのコメント

ウッドコーン 2008.2.7

昨晩、入手しました!
DCU-F121Wを購入しました。
早速、スーパースワンBODYに取り付け・・・
ドキドキの初音出し、おや???なんだか違う?
FOSTEXの一番最初に聞こえる
ガサガサゴソゴソという様な雑音が、ありません。
それは、良いのですが、劇的な音の変化も無い?
逆に劇的な音の変化が、あったとすれば、
今までのスピーカーに何か問題が、
あったのかもしれません。
強いて違いを探せば・・・クリアーボイス!
歌声、話し声が、クリアーです。
まだ、取り付けたばっかりなので決め付けるには、
早過ぎますね・・・
これから楽しみです!

PARC 2008.2.7

DCU-F121W購入ありがとうございました
ウッドコーン様

DCU-F121W購入ありがとうございました。
スーパースワンの事は良く知らないので正確なコメントは出来ないのですが、FOSTEXとDCU-F121WではユニットのTS定数がかなり違っているかと思いますので、BOXの寸法や吸音材等の再調整が必要になる可能性があるかも知れませんね。
それも自作スピーカーの楽しみの一つですので、これからのDCU-F121Wとのオーディオライフを大いにエンジョイしていただければ幸いと存じます。
今後ともよろしくお願いいたします。

ウッドコーン 2008.2.21

高音が、物足りない
DCU-F121W を取り付けて段々落ち着いてきた所で、
なんか高音が、物足りなく聞こえて来ました。
もう年なので?超高音は、聞こえないはずですが?
トゥイーターが、必要なのかなと感じている
今日この頃です。

PARC 2008.2.21

DCU-F121W 高音について
ウッドコーン様

コメントありがとうございました。
DCU-F121W の高音についてですが、これは皆様のお好みにもよるので一概にどうと言うのは難しいのですが、一般に販売されているこのクラスのフルレンジスピーカーと比べれば、少し控えめな方かと思います。

ただ当社のサウンドポリシーとして、中低域を最優先項目として開発していますので、高域を出すために中低域を犠牲にするようなことが無いように留意して設計を行っていますので、その点をご理解いただければ幸いです。

今後ともよろしくお願いいたします。

ウッドコーン 2008.2.22

結局、トゥイーター追加
試しにトゥイーター(古いソフトドーム)を
追加してみました。
良い感じで聴こえています。
本当は、フルレンジ?1発で行きたかったのですが、
良い感じなので良しとしましょう!
こんなことでもなんか楽しいんですよね。
次は、何をしてみようかな???

PARC 2008.2.22

DCU-F121W
ウッドコーン様

先ずは、新しい音が気に入られたようで一安心です。趣味としてのオーディオは、あくまでお使いになられる方のお好みが最優先となりますので、クラフトの世界をこれからも思う存分お楽しみください。

次は、本格的な2wayなんかに挑戦されたらもっと面白いかも知れませんね。ではまた。

ウッドコーン 2008.3.1

突然低音が・・・
先のエージングのお話で劇的に変わることは、無い!
との事でしたので錯覚なのかもしれませんが・・・
なんか突然低音が、かなり響く様になりました。
エージングが、進んだせいなのか???ん、ん、
エージングでは、そんなに変化は、無いとのお話。
う~ん良く分からないけど明らかに低音が、
出てくるようになって来ました。
落ち着くことなど無いのかな???

PARC 2008.3.1

エージングについて
ウッドコーン様

いつもコメントありがとうございます。
エージングで劇的に変化することは無いというのは、あくまで私の経験と感覚での話なので、それぞれの個人の感覚ではその変化を劇的と感じられることもあるかも知れませんね。

そう言えば、ある販売店様で某社のウッドコーンはエージングで劇的に良くなるとおっしゃっていたことがありましたが、当社で検証したわけではないのでなかなかコメントが難しい感じです。

いずれにしても、実際に使われているウッドコーン様の感覚が一番大事ですから、激変して良くなったと感じられているのでしたら、それはそれで喜ばしいことかと思います。

最後に、せっかくコメントをいただいて申し上げにくいのですが、エージング関連のコメントについては出来ればエージングについてのエントリーの方に書いていただけますとうれしいです。非常に興味深い内容ですし、他の方の参考にもなるかと思いますので、よろしくお願いいたします。

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