こんばんは。
今日はネットワークパーツの続きのお話です。そうです、コンデンサについてです。
最初に言っておきますが、今回のコンデンサの件は前回の珪素鋼板コイル以上に実現化のハードルは非常に高いので、ひょっとしたらこのブログだけの話で終わってしまう可能性も大いにあるので、ご理解よろしくお願いいたします。
前にも少し書いたように現状のクラフトスピーカー市場ではコンデンサはフィルムタイプが圧倒的に主流で、ほぼ全数と言ってもいいくらいではないかとも感じます。これに反してメーカー製のスピーカーはと言うと、状況は全く異なり、少なくともウーファー用では私の知る限り、ほとんどが電解コンデンサ(バイポーラ)を使用しているようです。
現在PARC Audioが中国ベンダーとのビジネスを行う際、一番メインでお世話になっているメーカーは実はネットワーク関連パーツでは業界で有名なところで、ここはソニーをはじめヨーロッパで超有名なB○○社、スピーカーで知らない人はいないJ○○社やB○○○社等、非常にメジャーなスピーカーメーカーと取引をしているところです。特にB○○社のネットワークは数百万円もするトップモデルを含めほぼ全数を製造しています。
そこで今回の出張時に彼らに、現在量産しているネットワークでウーファー用で使われているコンデンサについて聞いてみたところ、「ほとんど電解タイプですね」と予想どおりの回答でした。では何故クラフト用はこのような状況になっているのか? 販売店様にもどうしてユーザーの皆さんが電解を使わないのか聞いてみましたが、クラフト市場で電解を使わず、フィルムが主流になっている理由は下記のような感じでした。
1)一般的にフィルムの方が高性能と言われている。これが最大の理由という感じ。
2)電解タイプは、定数の公差(バラツキ)が多いため、クロス周波数がずれることがある。
3)電解タイプは、時間が経つと容量が抜けてくるリスクがある。
4)電解は価格が安いので、販売店であまり商材としてメリットが無い。
(これは私の推測です)
ここで、1)については確かにフィルムは、損失が少なく周波数特性も良好で、少なくともスペック面では反論の余地はありません。
また2)についても事実であり、確かにフィルムの方が一般的に公差は少ないようです。
3)については確かにフィルムより不利なことは事実ですが、実用上問題になるレベルかと言われれば、長年メーカーで勤務した経験でこれが問題になったことは記憶にありません。
ここまで書くと、やっぱりフィルムが一番だねということになりそうですが、そう簡単にいかないところが音の世界のやっかいなところです。では何故かというと、音質(音色)というちょっとデーターでは表せない部分があるからです。代表的な例を一つ言うと、MPコンデンサというものがあります。MPのPは紙(Paper)のPで、これもフィルムに比べて耐圧が低く、その価格は非常に高いのですが、その独特の厚みのある音を求めてヤマハやソニーがかなりの高級モデルに使用していました。
では電解の良さは何かといえば、やはりその音色にあると私は思っています。一言で言って電解は良い意味で音が甘く(悪く言えばボケることも)、厚い音になる傾向があり、逆にフィルムはSNは良いものの音がどちらかと言うと細め(良く言えば繊細)になってしまう傾向があります。そのため私はWF用でフィルムを使うことは好きではありません。ソニー時代も、ウーファー用でフィルムを使ったモデルは私の知る限りSS-A5等のAシリーズくらいだったのではと記憶しています。(最近のモデルは知りません) ちなみにこのAシリーズでも使ったフィルムは、ERO(エロ)というPPタイプの非常に特殊なもので、フィルムとは思えない甘い音色が特徴でした。このEROは高価ながら今でも秋葉の一部の販売店で販売されているのを見かけることがありますね。もちろんメーカーが電解を使う理由には、そのコストの安さということもあるかとは思いますが、電解でもオーディオ用の高価なタイプもあり、必ずしもコストだけということではなさそうです。
そこでPARC Audioとしてこの流れを少し変えたいと思い、今回上記2)の公差だけでもフィルムなみかそれ以上に改善したものを新規に商品化しようと現在検討中です。まだコストが確定していないので何とも言えないのですが、気持ちとしてはフィルムよりは安価で、なおかつ精度的にはそれ以上のものを製品化できればかなり面白いのではと考えています。
ただこの件を販売店様にちょっと話しした感じでは、「それはかな~りハードル高いですよ、冨宅さん。 日本のユーザーのフィルム信仰はかなりすごいですから・・・」と言われてしまい、正直ちょっと戦意消失気味ではあります。そんなわけでこれについては先にも書いたようにアイデアだけで断念という可能性もかなり高く、最初少量だけテスト販売なんていうことになるかも知れませんが、機会があれば是非お試しください。
では今日はこの辺で。
2008年05月27日(火)
この記事へのコメント
Unknown
ウーハーの-12db/oct以上のネットワークに電解コンデンサーを使用するということでしょうか?
確かに私もツイーターはフィルム信仰しています^^;
Unknown
電解とフイルムの音の違いに、コンデンサの抵抗分…タンデルタ、でしたか、それの影響って、ありそうにも思えますが。無論、スイッチング電源を作るのと違いますから、低ければ良いというものでもないのかもしれませんが。
Unknown
倉田様
はいその通りです。
UTP様
おっしゃるようにタンデルタ等の物性で電解がフィルムより優れているところは無いと思います。ただブログでも書いたように特性だけでは分からない音質の差もあるので、盲目的にフィルムが全て良いと決め付けるのはどうかと思っています。
私もTW帯域ではフィルムの方が圧倒的に良いと思っています。ただWFでは・・・・。
貴重
大手メーカーでさえ、ウーハー側は電解コンデンサを使っている話。貴重な情報ありがとうございました。ただParkさんとしては、正直コンデンサでのビジネスはきついかもですね。自分としては情報としていただけるだけでも、有り難かったです。市販スピーカーのコストの謎が自分なりに解けてきました。自分は今度電解コンデンサで試してみようかと思います。選択肢作っていただき、ありがとうございました。
Unknown
おっしゃるとおりコンデンサーでのビジネスは相当きついです。私もあまり期待していません。(笑)
これで変に商売っ気を出すと、また高いコンデンサーを売ることになり、それなら高いフィルムの現状と変わらないような気もします。
ただユーザーの皆さんに一度固定概念を捨てて、一度いろんなことにご自信でトライしていただけると、また新しい発見もあるかと思います。
私は部下と話をする時も、「その報告はあなたが実際に確認したことなのか、それとも誰かから聞いた話や予想を話しているのか、どっちなの?」
といつも確認をするようにしていました。もちろん、予想の話であれば私は直ぐに聞き流します。(笑)
何故なら、単に予想なら私の経験の方が長いから、俺はあなたの予想より自分の予想を信じるよということで。
Unknown
以前、大学の教員をしていた頃、学生や院生に口を酸っぱくして言っていたのが…
(1)よさそうに見えることが、本当によいかどうか確かめることが、科学的なのだ
(2)事実と理論が食い違ったら、決して理論を擁護してはいけない
…でした。が、あまり通じませんでしたね。私に権威がなかったせいでしょう(笑)テクノロジーのことを科学だと勘違いするわ、理論との食い違いは失敗と決めつけて、記録からササッと抹消してしまうわ…。
Unknown
UTP様
お気持ちよく分かります。私も研究所時代はこんな性格なので思いっきり異端児でした。身内から「彼のやってるのは開発じゃない」なんて陰口を言われたこともありました。(^^; でもエンジニアというのは最後は結果なんですよね。それしかないです。
当時の研究所は、研究のための研究をしている感じで、「君らは何のためにここにいるの?」って本気で聞いたくらいです。
Unknown
あまりよく知りませんが、高耐圧のバイポーラで精度を上げる(製造で頑張るのかな?、外れた奴を手で弾くのかな?)となると、結構いいお値段になりそうな気もするのですが。
これって1ロットでどのくらいの数量出来るもんでしょう。
Unknown
価格を含め、今検討中なのでまだこちらも分かってない状態です。精度に関しては、お察しのとおり選別が中心になります。ベースにするのはかなり実績のあるものなので、基本性能はこれで問題無いと考えています。最悪、価格を見てギブアップなんていうこともあるかも知れませんが、出来るだけ頑張ってみようかと思ってます。
ところで、ついにケブラー買っちゃいましたね。これで夢にも出てこなくなりますね。システムアップ楽しんでください。ではまた。
コンデンサーの比較
問題は「コンデンサーが変わると音がどう変化するのか」を僕の駄耳が聴き分けられるかどうかということですね。
もし解ったとしたら自分の持ってるフルレンジ以外のSPのネットワークに対して底なしの疑惑を抱くかもしれない。ALTEC CD408のコンデンサーを別なものに換えた、という人もいましたし。
世の中、知らない方が幸せなこともやっぱあるのかも・・(笑)
Unknown
おっしゃるように、御自身でその差が分からないようなら無視してよいかと思います。私の耳も人に自慢できるようなものではありませんが、常に意識しているのは自分の耳で聴いてみて効果が確認できないものは、どんなものでも採用しないということです。PARCの音を評価していただける方がいらっしゃるのも、ひょっとしたら私のダメ耳でも分かるような差があるものだけを採用しているのが効いているのかも知れませんね。(^^;
コンデンサーも同じで、音を聴いてみてやっぱり自分はフィルムが断然いいと思われる方がいらっしゃっても、それはそれでよろしいのではと思います。
ケブラー
ついに買っちゃったのですよ~。六本木さんのデモで音を聴いていたので、安心して(?)買えました。まぁ聴いてしまったために、我慢ができなくなってしまったので(給料日まで我慢しようと思っていたのに!)、善し悪しかも知れません(笑)
マルチは初めてなので、のんびり組んでいこうと思っています。
Unknown
ウーハーは今でも電解コンデンサーつかちゃったりしてますね。
信号と直列じゃないからそんなに影響ないかとおもってました^^;
Unknown
keik様
ブログ拝見しました。やりましたね。これからマルチもガンガン楽しんでください。きっとフルレンジには無い別の面白さがあると思いますよ。
あ~早くケブラーも推奨キャビ載せないといけないですね。すみません。
Unknown
倉田様
電解は高域特性が特に良くないので、TW帯域はやはりフィルムの方がいいと思いますね。ただメーカーの普及モデルでは全体域に普通に電解使ってますが・・・。
ちょっと横道
コンデンサーのお話で盛り上げっているところ、ちょっと失礼します。
ご紹介の映画「デーブ」が未知の作品だったのですが、どうも気になったのでAMAZON に注文してみて、本日届きました。
素晴らしいではありませんか、これ!
本当の良い作品をご紹介いただきまして、ありがとうございます。
Unknown
檸檬児 様
「デーブ」を気に入っていただけたようで、何よりです。本来このブログではスピーカー関連の話が中心なので、ちょっと場違いの感はありましたが、どうしてもこれだけはご紹介したいと思い掲載してしまいました。
個人的にはこれの続編「デーブ2」を切望してますが第一作があまりヒットしてないので無理でしょうね。何でもそうですが、本当に良い物が売れるとは限らないという例の典型ではと思います。
コンデンサ情報 感謝です.
はじめまして.
自作スピーカー道に入ろうかどうしようか思案中の者です.
コンデンサ情報ありがとうございました.
なるほど, 電解でも大丈夫なんですね.
勉強になりました.
またお邪魔します.
Unknown
nhaka様
コメントありがとうございました。
電解がベストというつもりはありませんが、今のクラフト業界で言われているような全くダメという雰囲気はちょっと言い過ぎではと感じています。
ただし、電解と言ってもピンキリでいろいろなグレードがあるので、出来るだけ良いグレードのもので聴いてみていただければと思います。PARC製も出来れば発売したいと頑張っていますが、これはいろいろと販売上の問題もあるため、まだどうなるかは微妙なところです。(^^;
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