中国出張レポート4

2008年05月25日(日)


          含浸固定前の珪素鋼板タイプコイル


こんばんは。

お待ちかねの出張レポート続編です。2日目は、朝からユニット関連のラップアップ(まとめ)を手短に行い、予定通りパーツベンダーの訪問に出発。今回もユニット関連のパーツをたっぷりと持ち帰る予定です。

同じ地区と言ってもやはりそこは中国。ちょっと移動と言ってもすぐに1時間くらいはかかるので1日で数社も回ると本当にハードスケジュールになります。今回は今までの中でも本当に一番ハードなスケジュールだったかも知れません。車での長時間の移動って、腰痛持ちには結構つらいです。

さて前置きはそれくらいにして、今回の訪問はいつものユニット関連パーツに加えて、ちょっと違うテーマもありました。ユニット関連のパーツについては社外秘の内容がほとんどなので、今日はそれ以外を中心にお話したいと思います。最初に言っときますが、2日目は初日のような笑い話は無しです。

じゃあそれ以外って何かと言うと、具体的にはユニットとは非常に関係の深いスピーカーターミナルとネットワーク関連パーツです。先ずスピーカーターミナルですが、これはPARC Audioでも既に1機種発売中ですが、今回さらに改良を行いバナナプラグケーブル線に加えてYラグ端子も接続できる万能タイプを検討中です。シャフト長も長くし、BOXでも楽に使えますので是非ご期待ください。ただ肝心の価格はまだ見積りが出ていないので、場合によっては企画ボツなんていうこともあるかも知れませんがその時はご勘弁を。

次が今回の本命のテーマのネットワークパーツです。ちょっと出張レポートからは話がそれますが、私はクラフトスピーカーの業界をPARC Audioを立ち上げてから知ったのですが、正直いろいろな点で驚くことが結構ありました。その中でも一番違和感を感じていたのが、ネットワークパーツについてです。具体的には、コイルは殆どが空芯タイプが中心で、コンデンサーについてはどこを見てもフィルムタイプばかり。もちろんこれらのタイプも良い点はあり、決してダメと言うつもりは無いのですが、何でもかんでも妄信的に空芯コイルとフィルムコンデンサーというにはさすがに抵抗がありました。

先ずコイルについてですが、現在主流の空芯コイルはコア(芯)が無いためSNは一番優れており、この点ではベストと言えます。ただウーファー用として使用する場合、非常に大きな欠点も持っています。それはコア材が無いため非常にDCR(直流抵抗)が大きくなってしまう事です。DCRが大きいと何故問題かと言うと、皆さんもご存知のようにスピーカーユニットというのは非常にDCRが低く、PARC Audioのユニットの例で言えば殆どのユニットがインピーダンス(6オーム)でDCRはたった5オームしかありません。で空芯コイルのDCRはと言えば、代表的なΦ1.0mm/1.0mHで見てみると0.49オームもあります。これってユニットのDCRのほぼ10%にもなってしまうのです。これに比べてコア入りタイプは、今回採用予定の珪素鋼板タイプだと同じΦ1.0mm/1.0mHで半分以下の0.21オームとなります。その差はたかが0.28オーム、されどこの差は大きいのです。ここで私の独断と偏見を言わせていただくと、ウーファー用に限定すれば珪素鋼板タイプの方が圧倒的に馬力感があり、ユニットの良さを素直に出しやすいという印象を持っています。空芯コイルも決して質が悪いということでは無いのですが、良く言えばお上品で、やはり音に鮮度が少ないという印象を受けてしまいます。特に線径の細いタイプはその傾向が強く、それを避けるために線径の大きなものにすると価格も高額になり、ユニットの価格とのバランスが非常に悪くなってしまいます。コイル1個で2,000円前後、-18dB/oct.で2個使えば3,000円を超えてしまいます。さらにDCRの低い太い線材だとコストはもっと上がります。それを使うユニット代が8,000円~10,000円くらいだとすると、ユニット屋の私としてはやっぱりこれって結構変では?と思います。

「ネットワーク素子にそんなコストをかけるなら、もっとユニットにコストをかけてくれ~!」

これはソニー時代に私がよくシステム屋と議論(喧嘩?)したことです。何事もバランスって重要です。それに何回も言いますが、

「スピーカーにとってスピーカーユニットは最重要パーツです!」

販売店様とも話をしてみましたが、ユーザーの皆様の定説(常識 or 思い込み?)みたいなものが結構強いので、なかなか今からそれを変えていくのはしんどいのではとの事でしたが、私はあえてこれにトライしたいと思ってます。私、こう見えても結構頑固で偏屈者です。ハイ。

ちなみに容量の大きいものではさすがに珪素鋼板タイプでも販売されているようですが、私がやりたいのは普通の小型スピーカーで使うクロス1kHz~5kHzくらいに使う定数つまり2.2mH以下くらいの小さい定数です。この辺が一番使用頻度が高いと思うのです。

それとついでに言うと、同じコアタイプでフェライトコアのタイプもあり、こちらはかなり安価なものが市販でありますが、私はこのタイプはあまり好きではありません。今までの経験で言うと、珪素鋼板に比べてどうしても音が甘くなり、グレードとしては価格なりという感じがしています。

さらにもう一つ重要なことがあります。コイルは巻き線をしっかり固定していないと音質がかなり悪化するということです。特に空芯タイプでは顕著で、珪素鋼板タイプでも巻き線の固定は非常に効きます。そのためPARC Audioではコイル全体をケースに入れて熱硬化タイプ樹脂でしっかりと含浸固定をする予定です。経験で言えば、コイル全体をしっかり含浸固定するかどうかでグレード差は2ランクくらい向上します。まだ最終サンプルや価格が決まってないのであまり大きな事は言えないのですが、出来るだけ皆様に喜んでいただけるような価格で発売にこぎつけたいと考えていますので、是非発売しましたらお試しください。 ただこれについては、販売店様が取り扱いをしていただけるかどうかという関門もあり、まだまだ紆余曲折があるかも知れませんが、是非皆様の力強いバックアップをお願いしたいところです。つまり、販売店様へ「珪素鋼板タイプのコイルが欲しい~!」というリクエストを出してもらえると、すごっくうれしいです。価格等が見えてきましたらまたご報告しますので、是非バックアップよろしくお願いいたします。 さて今日はコイルの話が長くなったので、続きは続編でということで。

この記事へのコメント

倉田 有大 2008.5.25

Unknown
写真のコイルは試作品なのでしょうか?
コイルって高いですよね、クロス下げると特に・・

tanukine 2008.5.25

Unknown
メーカー品以外にマルチウェイを使ったことが無いのですが、そこまでしてマルチにする必要が有るのかと、益々腰が引けますネ。
販売店にプッシュする為にも、マルチ奨励をいま少し強化して頂ければと、思う次第です。

keik 2008.5.26

Unknown
 自作歴1年ちょっとですから、いろいろご存知でないので(苦笑)、調べていました。

 ええと、空芯だと、必要なインダクタンスを得るために巻く線の長さを増やさなければならなくて、線材が細いこともあって線材そのものが持つ抵抗分が増える。
 で、インピーダンスの低い領域、例えば13cmウッドだと150Hz~1Khzくらいはインピーダンスを1割くらい押し上げる結果になると。
 これが音に良くない?この辺りまだよく分からなくて調査続行中です(笑)。例えばリアスピーカーなんか割と細めの線で10m以上引っ張ってるんですけど、結構影響あるんですかね。ちょっと外して抵抗測ってみようかな。

 昔はスピーカーって8Ωってのをよく見ましたが、PARCなんかは6Ωですね。アンプの能力があがったからインピーダンスが下がっているとか書いているのを見ましたが、アンプに十分な能力さえあれば低インピーダンスの方が良い?そうとも限らない?。

 マルチ行きたいので、この最近ぼちぼち調べています。まぁPARCのユニットなら適当に組んでもわりといい音になるので、最初は肩肘張らずにやろうかなと思っていますが、色々カットアンドトライをやりたいのでネットワークパーツは廉価な方がいいですね。

 ネットワークパーツって、売る方からするとある程度種類を揃えないといけないから、棚を食うこともあって、実店舗に導入してもらうのはなかなかハードルが高そうですね。しかし、なんとか頑張って、どこかで買えるようにしましょう。

nobu 2008.5.26

Unknown
PARCさんには、突詰めたフルレンジを
希望いたします。

PARC 2008.5.26

Unknown
倉田様

写真のコイルは、現在試作検討中のサンプル品です。これをケースに入れて含浸固定をします。

PARC 2008.5.26

Unknown
tanukine様

マルチ、フルレンジそれぞれに長所・短所がありますので、PARC Audioとしてはできるだけ両方のユーザー向けに商品を提供していければと考えています。

ちなみに販売店様でもマルチがお好きなところと、フルレンジ志向のところとがあります。前回ハイエンドショーでお世話になった六本木工学研究所様はマルチ派の代表といったところでしょうか。

PARC 2008.5.26

Unknown
keik様

長文のコメントありがとうございました。
コイルについて分かりやすくするためにDCRを強調して書きましたが、実は同じDCRにしても空芯と珪素鋼板の音質の差はあります。私個人は、珪素鋼板の音が一番好きです。やはり音に馬力というか芯がしっかりした感じがします。ソニーでも高級モデルを中心に特注の珪素鋼板(たしかΦ1.8mm線使用)をずっと使ってました。これはかなりのコストでした。

PARCのインピーダンスを6Ωにしている理由は、他社との相対比較(店頭等で)を意識してのことです。同じ理由で、単品スピーカーシステムも6オームのものが多いです。一番有利なのは4オームですが、これはさすがにアンプを選ぶのであまりやらないようにしています。

>ネットワークパーツって、売る方からするとある程度種類を揃えないといけないから、棚を食うこともあって、実店舗に導入してもらうのはなかなかハードルが高そうですね。

そうなんです。物を作ることより、この問題の方が一番の難問です。とにかく、扱っていただけるよう頑張ってみます。ただ商材としては単価も安く、種類が多いので、メーカー側も販売店側もあまりうまみのあるカテゴリーではないと思います。正直、PARC Audioとしてもこれで儲かるとは思っていません。ただこれを出すことでマルチ派が少しでも増えて、試作スピーカーのマーケットが増えてくれればと考えています。

PARC 2008.5.26

Unknown
nobu様

フルレンジのことも忘れていませんので、ご心配なく。ただPARC Audioとしてはマルチ、フルレンジどちらかということではなく、両方にトライしていきたいと考えています。
私の理想は、ユーザーの皆様がどちらの方式もトライされて、スピーカーの音の世界の奥深さをより味わえていただければと考えています。どちらも素晴らしいと思いますよ。

倉田 有大 2008.5.26

Unknown
できれば6オームのメモリつき可変式アッテネーターがほしかったりして^^
で、大体値の見当をつけたところ、固定アッテネーターに取り替えると。
FOSTEXのユニットではそうやってました~

PARC 2008.5.27

Unknown
アッテネーターは良質のものが無く、ソニーでもほんとうに困っていました。可変式は無理ですが、実用的なものとしては1dB単位で予めパッチを作っておくという方法がありますね。プロの現場ではよく見かけます。一回作っておくと非常に重宝します。

倉田 有大 2008.5.27

Unknown
なるほど、プラグか何かで用意に差し替えできるようにしておくのでしょうか?

PARC 2008.5.27

Unknown
そうです。
よくやる方法は、バスレフのポートからユニットとNW出力部から線材を長くして引き出しておき、BOXの外で音を聴きながら予め作っておいたアッテネーターのパッチを差し替えて音を確認していく方法です。
NE自体がまだ流動的な場合は、NWも外に出し、各ユニットから線材を引き出しておけばBOXの外で自由に定数を変更できるので非常に楽に作業が行えます。ただし、ここで忘れてはならないことは、NWが外であるものを中に入れた段階で音質は必ず劣化します。経験では2割前後かなぁと思いますが、その分を考慮しておいてください。まぁ自作の場合はそのままNWを外に出しておくという方法もありますが。

Opteron 2008.5.27

個人的には
珪素鋼板を投入したインダクタは、大きくなりやすい、Lを小型化できるので、小口径ウーハーで遊びたいと思っている自分には興味深いですね。ヒステリシス損や鉄損等心配なところも正直あるのですが、DCRの増加と比較すれば、無視できる部分なのですかね。商品化されたら遊んでみたいと思います。しかしフィルムコン高いのですね。ニチコンの単価ネットで見ましたが、びっくりしました。個人的にはCは日本製が一番という妄想を抱いていたのですが。

PARC 2008.5.27

Unknown
確かに物性面ではベストということではないかも知れませんが、音質的には珪素鋼板独特の良さもあり、個人的には非常に惹かれるところが大いにあります。
コンデンサーについては、次の続編レポートで書きますのでご期待ください。

Opteron 2008.5.27

革新
珪素鋼板コイルの音聞いてみたいですね。後はコイルの値段に興味が。(笑)話題がそれますが、ちなみにさきほど秋葉で抵抗買ったんですが、とうとう酸化金属からセメントに。(笑)だって125円なんですもん。(笑)

PARC 2008.5.27

Unknown
珪素鋼板コイルの価格は、少なくとも現状の同クラスの空芯コイルよりは低い価格設定にしたいと考えています。まだ最終の見積りが出ていないので、偉そうなことは言えないのですが何とか頑張ってみたいと考えています。

コメントを投稿

※【ご注意ください】コメント欄に不具合が生じる恐れがある為、
メールアドレスにguest@example.comを入力しないようにしてください。
※お名前は必ずご記入をお願い致します。ニックネームでも構いません。
※メールアドレスは必須ではありません。また、ご入力いただいても公開はされません。

*


  |