ポート(ダクト)ノイズについて

2012年06月29日(金)

こんばんは。今日はバスレフシステムのポートノイズについてお話したいと思います。今日はちょっと長文になりますがお許しを。

 

先日このポートノイズに関するお問合せをいただいたので、その時のメールのやり取りをご紹介させていただきます。

  

エンクロージャー(約7L リアバスレフ φ40×140mm)を自作し、DCU-T113S + DCU-131Aの2WAYにて音楽を楽しんでおりました。

このスピーカーで聞くピアノ曲は最高で、これ以上を望むのもなんだなぁと思っていたのですが、DCU-131Aから手持ちのDCU-F131Wに入れ替えたらどんな音になるんだろうと興味が沸き、先日、試しに入れ替えてみました。

 

推奨15Lに対して、7L程度とDCU-F131Wにとっては容量が小さいエンクロージャーだと思うのですが、聴いてみるとDCU-131Aよりも低音の量感は抜群で、弦楽器やボーカルはこちらの方が好みでした。いっそのこと入れ替えてしまいたいと思っているのですが、ひとつ気になることがあるのです。

 

テストCDで40Hz~80Hz程度(実効値約2V)の正弦波を加えると、DCU-131Aでは全く聴こえないのですが、DCU-F131Wでは余計な付帯音が左右ともに上乗せされて聴こえるのです。なんといったらいいのでしょうか、コーン上に異物が付いているような音?といったらおわかりでしょうか(定量的に表現できなくてもうしわけありません。)

 
ただ、DCU-F131Wをエンクロージャーから取り外して同じ出力を引加しても付帯音は聴こえないので、ユニット自体の問題ではないと思っています。
やはり、DCU-F131Wにとって7L程度のエンクロージャーでは問題があるということなのでしょうか?
 
このままでは精神衛生上満足して音楽が聴けないので、せめて原因のメカニズムが知りたく、ご教授いただければ幸甚です。
 
 
このメールに対しての私の回答が下記になります。
 
 
お問合せの付帯音の件ですが、実際にその音を聴いていないので、あくまでメールでの文面を見た限りでの回答をさせていただきます。正解ではない可能性もありますが、何卒ご了承ください。
 
*BOXからはずしてユニット単体では問題ない
*BOX実装でも、131Aは問題ない
*BOX実装のF131Wのみ問題がある
 
ということから類推すると、一番可能性が高いのはダクトのポートノイズかと思います。
 
 
これは俗に言うダクトの風切り音というもので、ポート径が小さい場合に、低音のエネルギーの大きいユニットなどの場合、ポート内の空気の流速が早くなり過ぎて、そこでノイズが発生するというものです。これの場合は、実装時にユニットの直前と、ダクトの直前に耳をあてて聞いて違いがあれば分かるかと思います。
 
131Wは13cm口径ユニットの中ではダントツで低域が出るユニットのため、131Aよりもこれが出やすいところはあります。ただこれは低音が出るということとトレードオフなので、あまりこのポートノイズに神経質になると、ユニット自体の低域を抑えることになり、なかなか微妙なところです。
 
これの対策としては、ダクトの流速を落とすことが有効です。具体的にはダクト径を大きくすることになりますが、同じチューニング周波数にするためにはダクトを大きくした場合は長さを長くすることになり、現在の140mmからさらに長くする必要があります。この時、あまり長くし過ぎると、今度はダクト内の管共振が出ることがありますので、ご注意ください。
 
 
一応7Lでシミュレーションしたものを添付しておきますが、ダクトをΦ50にすると、ポートの流速はかなり減りますので、ポートノイズも比例して減ることになります。
 
あと抜本的な対策ではありませんが、ダクト内に薄いフェルトなどを貼って、ポートノイズを少し抑える手法もあります。
 
 
 でその後お客さまから頂いたのが下記のメールです。
 
メールの件ですが、代表にご教授いただいたようにダクト内にフェルト(厚さ1mm)を貼ってみたところ付帯音は激減しました。
原因はやはりポートノイズだったようです。
 
ただ、フェルトを貼ると、ダクトの断面積が減ってチューニング周波数が少し下がるのでしょうか、低音の量感が減った感じがします。
かといって断面積を増やそうとするとダクトの長さも増やす必要があるので、今のエンクロージャー寸法では無理そうです。
 
まぁ、原因がわかったのでこれからいろいろいじって楽しんでみようかと思います。スッキリしました。ありがとうございました。
 
 
ということで、この件は予想どおりポートノイズだったわけですが、小容積のBOXはダクト径も小さくなりがちなので、このポートノイズはバスレフシステムに関してはケアすべき内容です。
 
特にPARCのユニットは低域が出るものが多いので、この件はなかなか悩ましいところですね。
 
パイプオルガンなどの超低域ソフトなどがお好きの方は、出来るだけポート径は大きめにすることが吉です。ただあまり長くし過ぎると、ポート内の管共振の音が目立つこともあるので、ご注意ください。
 
 
ちなみにメーカー製のバスレフなどでは、曲げダクトを使って、長さをかせぐ手法をとることが結構ありますね。
この曲げダクトは、成形品を使ったり、紙管ダクトを斜めにカットして貼り合せるという手法もあります。
 
 
 
 
 

この記事へのコメント

nobu 2012.6.29

久々に投稿します。
PARCさんのモデルはバスレフポートの前面が
フレア形状になってるものが多いと思います。
フレア形状に対してのPARCさんの考え方を
教えて頂けるとうれしいです。

parc 2012.6.29

nobu様

>フレア形状に対してのPARCさんの考え方を教えて頂けるとうれしいです。

PARCのモデルはユニット背面でもエアーフローのためのザグリを設けるなどしてエアーフローには気を使っています。
ダクトも同様で、やはり入り口のフレアは空気のスムースな流れには有効で、出来るだけ大きいものを入れるようにしています。ポートノイズにもこれは有効です。
フレアに関してだけ言えば、成形品のダクトがベターなのですが、成形品は肉厚が薄いので、どちらを取るかはなかなか悩ましいところですね。

ちなみにフレアはBOX内の方にも入れた方がいいのですが、これはコストの関係で汎用クラスではやっていませんが、現在検討中のPF用のBOXでは入れています。

nobu 2012.6.30

とても参考になりました。
ありがとうございます。

道人 2012.6.30

ポートとフレアの話題が出ましたので教えて下さい。

バスレフポートの出口をフレア形状にする場合、長さはどこから測るのが最適なのでしょうか?

長めのダクト長ですと誤差の範囲に収まるような気がしますが、短いダクトで半径の大きいRですとどこから測るかによっては無視できない結果となるような気がします。

parc 2012.6.30

nobu様

お役にたてて何よりです。

parc 2012.6.30

道人様

>バスレフポートの出口をフレア形状にする場合、長さはどこから測るのが最適なのでしょうか?

私もこれに関しての計算式は見たことがありませんが、今使っているシミュレーションソフトではフレア付での計算が自動でできるので、それを参考にしています。
ちなみにPFの例で言うと、フレア無しのΦ67-60に対し、片側フレアだとΦ67-75、両側フレアだとΦ67-90くらいが等価のようになりますね。

ただ実際はフレアの有無以前に、シミュレーションの結果は参考程度で、音を聴きながら決めていくというのが実情かと思います。箱の補強や吸音材の量をちょっと変えるだけでもダクト長が変わりますからねぇ。

道人 2012.7.1

具体的な数値で教えていただき、大変分かりやすいです。

そのシュミレーションソフトによると、フレア開口部の削ったRもダクト長に計算されているようですね。
逆に言えばフレア計算のできないソフトでは、フレア加工の長さを足さなくてはいけないようです。

今後の参考にさせて頂きます。ありがとうございました。

parc 2012.7.1

道人様

>逆に言えばフレア計算のできないソフトでは、フレア加工の長さを足さなくてはいけないようです。

そうですね。どの程度足すかは、実際の測定値と比べながら決めていけばいいのではと思います。

GX333+25 2012.7.2

PARC 様

>PFの例で言うと、フレア無しのΦ67-60に対し、
>片側フレアだとΦ67-75、両側フレアだとΦ67-90
>くらいが等価

 具体的な数値を聞いて、少なからず驚きました。板厚の関係もありますし、ホーンのようになっても具合が悪いだろうと思いますから、そんなに大きなフレア形状でないとは思うのですが、片側だけで15mmの長さに相当する、というのはいったいどういう理屈なのか……確かに、あれこれ考えるよりもカット&トライで試聴して決めていくより他ない、としか言いようがありませんね。

parc 2012.7.2

GX333+25様

>片側だけで15mmの長さに相当する、というのはいったいどういう理屈なのか

今使っているソフトでは、フレアのRなどの数値は最初から設定されているようで変更ができないため、具体的にどのような計算をしているのかは私も分かりませんが、たしかにイメージよりは数値的にも影響は大きいですね。

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