トゥイターについて

2013年03月08日(金)

こんばんは。今日はお約束のトゥイターについての技術ネタです。

 

トゥイターと一言で言っても方式から材質までいろいろとありますが、過去のブログで概略は書いていますので、まだお読みでない方は下記を参照してみてください。

振動板の軽量化について(トゥイーター編)1
振動板の軽量化について(トゥイーター編)2

 

先ず今回ご質問があったドームトゥイターとコーントゥイターとの比較についてお話します。

 

ドームトゥイターは振動板の外径とボイスコイル径がほぼ同じに対して、コーントゥイターは一般のフルレンジ同様にボイスコイル径に対して振動板の外径はかなり大きくなります。

 

これは言い換えれば、同じボイスコイル(磁気回路)を使った場合、コーントゥイターの方がドームに対してより大きな振動系となり、結果としてSPL的には非常に有利になります。(SPLで一番効くのは振動系サイズなので)

 

反面、同じ(または近い)振動系サイズの場合は、ドームの方がボイス径が大きいので、耐パワー性は有利となります。(ボイスコイルは音の出る電気コンロですから、サイズが小さいほど熱的に弱いのです)

 

また振動板の剛性的には形状的にドームトゥイターの方が有利で、高域特性や歪み特性などはドームの方が圧倒的に優れています。ハイファイモデルでドームが多いのはこれが最大の理由だと思います。

 

さらに口径が小さいドームトゥイターは指向性でも優れています。(指向性はサイズと相関関係があります)

以上をまとめると、下記になります。

 

*SPL → ドーム < コーン

*高域特性、歪み特性 → ドーム >> コーン

*指向性 → ドーム > コーン

*耐久性 → ドーム > コーン

 

 

次にドームでの口径の関係ですが、振動系サイズ(=ボイスコイル)を大きくするにしたがって、SPLや耐パワーと中低域の再生能力は向上しますが、反面指向性や高域特性が犠牲となりトレードオフの関係となります。

 

市場に20mm径や1インチ(25mm)径が多いのは、上記のトレードオフの関係を考慮してのことですが、30mm径やさらに上の50mm径のトゥイターも無いわけではありません。まぁはっきり言って、20mmや25mm径が一番バランスが取りやすいということですね。

 

また市場で多いということは、それだけ標準で流用できるパーツも多いということで、これもメーカーにとっては重要なことです。というのは、標準から外れたサイズを使うと、パーツがどうしても割高になってしまうので、よほどの理由がないとなかなか商品化をするのは厳しいという事情もあったりします。

 

トゥイターのサイズで特に悩ましいのが16~20cmクラスのウーファーを使った2wayの場合で、中域を重視して30mmにするか、高域特性を重視して25mmにするか、これはメーカー(設計者)によっても考え方が違います。

 

私の場合はやはり高域を重視して25mmを選びますが、ソニーでも別の設計者が担当したスタジオモニター用のモデルなどは30mmトゥイターを採用したこともありましたね。

 

ちなみに超変則技ですが、以前ソニー時代にある特殊な用途で特注の13mmドームを天然ダイヤモンド振動板で設計したことがありますが、高域特性は余裕で100kHzを再生しますが、SPLはびっくりするぐらい低く、とても一般のシステムで使うのは難しいという感じでした。(^^;

 

パークの場合は20mmと25mmがあり、一般的な言い方をすれば20mm(DCU-T114S)は小口径ウーファーやフルレンジ用のアドオントゥイターとして、25mm(DCU-T115S)は中口径以上のウーファーとの2wayでといった感じになりますが、20mmのチビッ子TW(DCU-T114S)もサイズの割りに90dBと大健闘しており、20mmでもここまでやれるという好例かと自負しています。

 


この記事へのコメント

ゴン太 2013.3.9

素人向きに、平易でわかり易い解説をしていただいて、ありがとうございました。
20mmや25mm径が市場で多く、パーツが得やすいという項目には、そんな事情もあるのかと納得しました。

確かに16センチや20センチ口径のウーファの場合、2ウエイの構成は悩みますよね。
中抜けの懸念も出てくる。
もし仮に御社のユニットで3ウエイを構成する場合、
ウーファDCU-171PP、スコーカーDCU-F131PP、トゥイータDCU-T114Sという組合せを考えてみたいですね。
能率さえ上手くいくなら、スコーカーは8センチのDCU-F081PP を使ってみたいところです。
振動板の素材も統一しているし、音色的にはイケると思うのですが。

parc 2013.3.9

ゴン太様

>ウーファDCU-171PP、スコーカーDCU-F131PP、トゥイータDCU-T114Sという組合せを考えてみたいですね。

なかなか良さそうですね。多分相性ばっちりだと思います。パークのPPコーンはウッドコーンに隠れてちょっと地味に見えるかも知れませんが、一度音を聴いていただければお分かりのように市場にある一般的なPPコーンとは一味違う独特の音離れの良さがあるので、是非皆さんにもお試しいただければと思います。

>能率さえ上手くいくなら、スコーカーは8センチのDCU-F081PP を使ってみたいところです。

う~ん、これはさすがにSPLが足らないかも知れません。F081PPの中高域のヌケの良さは出色ですが、やはり口径が小さいのはSPL的には厳しいですね。

faston07 2013.3.11

parc様

いつも分かり易くためになる解説、ありがとうございます
昨今のコーン型ツィーターが何故淘汰されつつあるか、この解説を読むと納得できますね。70年代や80年代であれば「コストがかけられる製品(システム)はドーム、かけられない製品はコーン」のような棲み分けがあったように思うのですが、ユニット製造の中心がアジアに移って、このヒエラルキーが崩れてしまったのかと。

ただ個人的に、コーン型にはドームとは違う「力感」のようなものを感じるユニットが多い気がします。これは素人考えですが、指向性がある程度絞られるために、放射エネルギーが軸上付近に(ビーム状に)集まることも一因なのでは、と思います。ドームは拡散性が強いからそれが出ない、というのも短絡的と思いますが。

それと、コーン型ツィーター(それも紙製振動板のもの)には、ファブリックドームとはひと味違う音調があるように感じています。ダンプされていない、乾いて抜けの良い質感というか・・・これは往年のJBLユニットの刷り込みが強い所為かもしれません。
私見ですが、そういうユニットを眺めてみると、コストの制約の中で「つくり手の巧さ」みたいなものを感じることが多いのですね。(分かりにくい喩えで恐縮ですが)写真用レンズで言えば、安価な三枚玉が時として侮れない描写をする、みたいな感じです。美味い蕎麦屋のかけそばというか。

可能であればparc様のつくるかけそばや素うどんを食してみたく思いますので、社業ご清栄の折りにはコーン型ツィーターもラインナップいただければと思います。その際は是非試させていただきます。できれば音調が統一できるペーパーコーンのウーファーと一緒に・・・といっても商売にはならない可能性が高いので、これも無責任な意見で申し訳ありません。

ところでネットワーク素子についての質問ですが、電解と同様に中国生産でparcブランドのMPコンデンサは、できないものでしょうか。

parc 2013.3.12

faston07様

>個人的に、コーン型にはドームとは違う「力感」のようなものを感じるユニットが多い気がします。

私も同感です。ただこの大きな要因は、私見ではありますが、指向性とかではなく、むしろその素材からきているのではと感じています。コーン型=紙コーンというものが多いですからねぇ。

>コーン型ツィーター(それも紙製振動板のもの)には、ファブリックドームとはひと味違う音調があるように感じています。

そうですね。私も同感です。JBLの絶頂期のころのコーンTW(モデル名は忘れましたが)などはほんと魅力的な音を出してましたね。
ただあの音は今のコーンでは先ず難しいのではと感じます。JBLはフリーエッジでしたが、コーンTWではフィクスドエッジも多く、この場合はエッジ部とコーンボディ部の板厚を変えて抄紙をする抄き分けという手法が必須で、かなりのノウハウが必要なので、今できるところは少ないでしょうね。

>中国生産でparcブランドのMPコンデンサは、できないものでしょうか。

MPコンデンサとは、かなりレアものですね。名器の1000Mを思わず思い出します。これはソニーでも使ったことがありますが、当時20年以上前でも既に入手が困難だったことを覚えています。
おそらく今は国内でもほとんど無理なのでは・・・・。

faston07 2013.3.13

parc様

素人の思いつきに、いつもながら丁寧な返信をいただき、感謝です。
後から気がついたのですが、御社新製品がデビューしたばかりの時点で、方式の異なるユニットについを待望するような書き込みは配慮に欠けていますね。たいへん失礼いたしました。

ドーム型とコーン型それぞれの音調について、parc様も同じ印象をお持ちとのこと。ちょっと安心しました。またペーパーコーンの製造が現在では難しくなっている由。たいへん残念ではありますが、方式や素材に捕らわれ過ぎるのも良くないことですね。

MPコンデンサについても、既に過去の遺物かもしれません。これを大量に投入した1000Mもそうですが、手元にあるヤマハの某90年代製スピーカーにも、珪素鋼鈑コイルとMPが使われていました。
ネット上のいろいろなサイトではこのMPを最新のフィルムに換える試みがなされており、私も興味を引かれたことがあります。ただ御社の電解コンデンサについての解説を読むにつけ、これはあながちコスト面だけの理由ではないと思うようになり、自作スピーカーで試せるものならと考えた次第です(MPは需要が激減していること、また公害問題などで難しいことは承知しています)。

アナログ全盛期には、ユーザーが弄れる部分としてフォノカートリッジがあり、自分の好みの音を気軽につくれたものですが、今はそういう部分が少なくなっているように思います。その鬱憤がネットワーク素子に向かっているのかもしれませんが、parc様のブログを愛読するようになってから、システムをまとめあげた技術者へのリスペクトを失わないようにしたいと思うようになりました。

興味の尽きない話題の数々、今後も貴ブログに期待するところ大であります。

parc 2013.3.13

faston07様

>御社新製品がデビューしたばかりの時点で、方式の異なるユニットについを待望するような書き込みは配慮に欠けていますね。

いえ、全く気にしていませんので、ご希望があればどうぞ自由にお書きください。ユーザーの皆様のご要望を把握することは非常に重要だと考えていますので。

>ネット上のいろいろなサイトではこのMPを最新のフィルムに換える試みがなされており、私も興味を引かれたことがあります。ただ御社の電解コンデンサについての解説を読むにつけ、これはあながちコスト面だけの理由ではないと思うようになり、

MPコンですが、これは非常にバカ高いです。そのためメーカーがコストを下げるためにこれを使うことは有り得ないと思います。ソニーも当時物凄く高いコストをかけて使いましたが、ユニット屋の私はもうちょっとユニットの方に予算をくれ~と抗議したものです。(笑)

ネットなどで、MPコンをフィルムに換えてグレードアップしたというような記事をたまに見かけますが、正直なところ何だかなぁ・・・といった印象を持ってしまいますね。もちろん特性ではフィルムの方が優れているとは思いますが、少なくともオリジナルのモデルはある意図を持ってMPコンを使ってバランスを取っているわけで、個人的にはそれをフィルムに換えただけで音が良くなるというような単純な話ではないと思います。

>これはあながちコスト面だけの理由ではないと思うようになり、

そのとおりです。実際パークではフィルムよりも電解の方が価格は高いです。どちらかが全て上ということではなく、それぞれに持ち味があり、それをどう料理するかということかと思います。

>興味の尽きない話題の数々、今後も貴ブログに期待するところ大であります。

ありがとうございます。今後とも頑張りたいと思います。

コメントを投稿

※【ご注意ください】コメント欄に不具合が生じる恐れがある為、
メールアドレスにguest@example.comを入力しないようにしてください。
※お名前は必ずご記入をお願い致します。ニックネームでも構いません。
※メールアドレスは必須ではありません。また、ご入力いただいても公開はされません。

*


  |