ユニット用パッキンについて

2011年06月06日(月)

こんばんは。少し間があきましたが、今日はユニット用パッキンについてお話します。

 

ユニット用パッキンの役目は、ユニットとBOXの間の微妙な隙間をうめて空気漏れを防ぐシーリング材としてのものと、ユニットが微妙に浮いてBOXとの間でビッて異音が出るのを防ぐビリ止めにあります。ただ意外に多いのが、このパッキンを使わずに直接ユニットを取り付けているケースですが、ダイキャストフレームとしっかり平面度の出たバッフルとの組合せではあまり問題は出ないようです。ただし、密閉型については非常にシビアな密閉度が要求されますから、このパッキンは必須ということになりますので、ご注意ください。

 

でここからが大事な話なのですが、上記項目とは別にこのパッキン材が音質に与える影響ということがあります。ユーザーの方と話をしていると意外にこの点については無頓着という方が多いのですが、ユニットにもよりますが予想以上に影響が大きいことも結構あります。

 

では材質別での音質の印象はどうかと言うと、一番ダイレクト感があるのがパッキン無しの状態になります。このダイレクト感というのは、言い換えればよりユニットの音がストレートに出るということで、中高域がクリアになったり分解能がよくなる感じで、ユニットによっては高域が五月蝿く感じたりすることもあります。そのため、元気のいい(ちょっと五月蝿い?)傾向のユニットにはあまり向きません。

 

パッキン材の中で一番ダイレクト感のある材質は硬質紙と言われる硬い紙で、これは薄い材料を使えばかなり無しの状態に近い感じになります。他の材質にも共通して言えることですが、パッキン材は厚くするほど、どんどんダイレクト感が無くなっていき、同時にパッキン材の音色の影響が多く出るようになります。

 

一番一般的に使われている材料は発泡系の材料で、PARCもこれを使っています。これの利点は、かなり薄いものでも前述のビリ防止やシーリングに対しての効果が高いことで、1mm程度の薄い材料を使っていれば音色への影響も抑えることが出来ます。この系統の材料は、厚くしていくと音が甘くなり、よく言えば音が太く、悪く言えば音がボケる感じになります。中高域にクセのあるユニットには、意図的に厚いものを使ってここで調整するという方法もありますが、まぁこれは最後の手段といった感じですね。

 

ちょっと裏話をすると、最初にPARCのパッキン材を中国と決める時、中国サイドのエンジニアが自信満々の顔で「冨宅さん、このクラスのユニットはパッキンは2mmを使わないと問題が出ますよ。」と言われたのですが、こちらが音質のことを考慮してあえて薄い1mmを指定していることを理解してもらうのにほんと難儀したものです。ぶっちゃけた話、こういうのを余計なお世話というのですが、こういうことまでいちいち説明するのは、ほんと疲れます。(^^;

 

それ以外では最近はあまり見かけませんが、コルク系の材料があります。このコルクにもゴム系のものとそうでないものがあり、ゴム系のものが一番音が緩く、甘い(別の言い方をすれば、一番音が太くなる)という感じですが、プロ用のパワー感のあるユニットには相性のいいものです。特に今お持ちのユニットの音が五月蝿いと思われている方には、この材料は有効です。ただし、このコルク系は前回お話したように非常に貼り付きを起こしやすいので要注意ではあります。

 

ちなみにこのパッキンは、ホーンとホーンドライバーの間に付けるパッキン材でも同じ傾向で、ホーンの方がより差が大きいように思います。ソニーでもホーンドライバーを開発した時には、かなりの素材をいろいろと比較検討し、最終的には特別な硬質紙を探してきて採用したことがありました。銀座の大手文具屋さんに行って、色々な紙を買ってきたことが今から思うとほんと懐かしいです。昔は本当に細かいことまで時間をかけて検討していました。こういうところも、知らない人が見ると何か安っぽい紙を使ってるなぁと思われるかも知れませんが、こんなところがええっと思うくらい大きく影響するので、ほんとスピーカーは怖いですね。是非皆さんも暇な時にでも、いろいろとパッキン材を変えてみて音の変化を確認してみると面白いかも知れません。この変化はNWの調整などの電気的な調整では変えられないところなので、非常に貴重です。では今日はこの辺で。

 

この記事へのコメント

GX333+25 2011.6.8

PARC 様

 ううむ、本当にスピーカーというのは奥が深いのですね。いつも、スピーカーユニットは部品点数が小さいので、一つ一つの積み重ねが大切なのです、とおっしゃっていますが、こんなところまで影響を及ぼすとは、本当に恐ろしいというかおもしろいというか。

 しかし、考えてみれば、あらゆるキカイ、「継ぎ目」というのは非常に大切なことに思い当たりました。今、大問題を振りまいている原発にしても、容器そのものの健全性よりは、配管の「継ぎ目」が壊れた可能性の報が大きいし、スペースシャトルを吹っ飛ばしたのも、補助ロケットブースターのOリングの不具合でした。Oリングといえば、ガスケットやパッキン材の親戚筋。

 目の届きにくいところですが、とても大切なんでしょうね。

parc 2011.6.8

GX333+25様

>こんなところまで影響を及ぼすとは、本当に恐ろしいというかおもしろいというか。

そうですね。こればかりは、実際に体験しないと実感がわかないのではと思います。でもそういうスピーカーなので、うちのようなガレージメーカーでも存在価値を出せるということでもあるので、私はある意味ラッキーかも知れません。

ひでじ 2011.6.11

ユニット用パッキン!!!
といえば、外しましたよ!!!
というのも、
学生時代の頃のオーディオに夢中だった頃
いわゆる教祖的自作評論家の書いた本に
①スピーカーunit取付スクリュウの締め増しと
②スピーカーunitとエンクロジャーの間に挟んであるパッキンが
音のダイレクト感を失うので取ってしまうと良い!
という記事が横行していましたから^_^;

自分も、3年前にSX500spiritをメンテナンスする時、挟んであったコルクがボロボロだったので削除した位、
自作マニアには浸透した定説ですネ。
その後、spiritは低音が出なくて、カレンダーの厚紙を挟んで、聞けるレベルになったので、
富宅さんの話を見て変に納得してしまいました。

parc 2011.6.11

ひでじ様

>パッキンが音のダイレクト感を失うので取ってしまうと良い! という記事が横行していましたから^_^;

そんな記事があったのですか。知りませんでした。確かに部分的には正解ですが、何でも外せばいいというわけでもないので、ちょっと極論過ぎるかなぁ・・・。でもこういうふうに力強く断言するから教祖様になれるのでしょうね。(私はなりたくないですが)

>spiritは低音が出なくて、カレンダーの厚紙を挟んで、聞けるレベルになったので、
富宅さんの話を見て変に納得してしまいました。

そうなんです。何事もバランスが大事ですからねぇ。

やま 2017.5.2

2年ほど前にONKYOのD102AXのウーハーをDCU-F131Wに交換して聞いていましたがパッキンなしでしたので先日ホームセンターから2mm厚のコルクを買ってつけてみました。 音だしした所低音のすごい音の変わりようです。パッキンでこれだけ変化するとは目からうろこならぬ耳からうろこでした。 

parc 2017.5.3

やま様

>パッキンでこれだけ変化するとは目からうろこならぬ耳からうろこでした。 

2mmのコルクと、パッキン無しではかなりの差でしょうね。
お好みではありますが、少し薄いものでもお試しされてみるのもありかと思います。

Sohms 2023.10.9

パッキン一つで色々あるのですね。
ユニットを取り替える際に駄目にしてしまうことがあるのですが、パッキンだけの通販があるとありがたいです。

付属品の通販についてご検討いただけますでしょうか。

parc 2023.12.20

Sohms様

コメントのアップと返信が大幅に遅れてしまい、誠に申し訳ありませんでした。

付属品の販売ですが、ある程度の需要があれば対応可能ですが、現状はほとんどリクエストが無いため、部品在庫のことを考えるとなかなかハードルが高いのが実情です。

何卒ご了承いただければ幸いです。

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