こんばんは。今日はプロジェクトFのウーファーコーン紙に採用する共振分散補強リブについてお話します。
補強リブというのはその名前の通りコーン紙を補強するために付けるリブのことですが、同じ形状のものを等間隔で付けるやり方が一般的です。
今回プロジェクトFで採用する共振分散補強リブは、この補強リブの間隔を徐々に変化させていくもので、ソニーの業務用38cmウーファー(SUP-L11)に初めて採用したものです。これの考え方は、既にPARC Audioでも商品化しているチビッ子ウッドコーン(DCU-F071W)の共振分散フレームと同じで、出来るだけ特定の周波数に共振モードがでないようにしようということです。正直昔の手書き図面の時代では、このコーン紙の図面を書くのは結構ブルーになりますが、今のCADベースの図面では比較的楽に書くことができ、本当に便利になったもんです。
このコーン紙で目で見て分かる特徴はこの共振分散補強リブですが、もう一つの特徴はそのパルプにあります。コーン紙の原材料のパルプには大きく分けてSP(亜硫酸パルプ)とKP(硫酸塩パルプ)の2種類がありますが、昔から名器と言われるユニットに使われているコーン紙は全てSPなのです。ちなみに私が新人だった頃(ずいぶん大昔です)、研修の一環でSPとKPのコーン紙を自分で抄紙して測定したり音を聴いたりして、その違いを勉強したことがほんと懐かしいです。今はこういうことをやらせてもらえる環境が、大手メーカーでも無くなっちゃいましたからねぇ。
ちょっと話がそれましたが、両パルプの音を一言で言えば、しなやかで音に独特の厚みやまろやかさがあるSPに対し、剛性が高くパリッとした音が特徴のKPと言った感じでしょうか。昔V社時代に先輩から、KPは音にパンチがあるのでPAには向いているが深みがないんだよねぇ、と言われたことを今でも覚えています。もちろん一言にコーン紙と言っても、パルプの叩解度(どの程度パルプを砕いて細かくするか)とか、ベースのパルプ以外にも各種添加物が入っていたりするので、SPなら全て同じ音という単純なことではないのですが、やはりSPとKPの間に歴然とした差があるのも事実です。
さてコーン紙は重要なテーマでちょっと1回では紙面が足らないので、残りは次回にしたいと思います。(次回に続く)
この記事へのコメント
PARC 様
このコーン紙、昨年の真空管オーディオフェアに参考出品なさっていたのと同じものでしょうか。もしそうだとしたら、完全に見落としていましたね。リブの間隔は内側ほど広くなっていますが、当然、それぞれの間隔が倍数関係にならないように、という配慮もなさっているんでしょうね。
確かに、最近のスピーカーでは、まず「紙」を使ったコーンが少なくなっているうえ、17cmクラスでこんなリブの入ったコーン紙というのは、ちょっと思い浮かびませんね。製造もなかなか大変なことなんでしょう、きっと。
GX333+25様
>このコーン紙、昨年の真空管オーディオフェアに参考出品なさっていたのと同じものでしょうか。
はい形状的には全く同じものです。
>製造もなかなか大変なことなんでしょう、きっと。
このクラスのしっかりしたノンプレスコーンを製造できるコーン紙メーカーは、国内には2社しかなく、そのうちの1社も国内での量産は無くなり、試作だけとなっているようです。数少ないmade in Japan となりますね。
PARC代表殿
写真を拝見していて、昔は今よりも多くのユニットにリブが入っていたものだと思い出しています。海外製品ではJBLの大口径ウーハの多くには一見等間隔に多数のリブが入っていました。2231A等ですが、同時期の製品でリブのない物もあったように記憶しています。
日本製品ではダイヤトーンのP610には不等間隔で数本のリブがありました。カタログに標榜されていた「整合共振」のキーになる要素だったのだろうと理解しています。感覚的には高い音域の振動ほどネックに近い小面積の部分を振動させるということでしょうか。
同じダイヤトーンでも、2S305のウーハだったpw125のリブはネック近傍に集中していました。カタログに言う「メカニカル(ローパス)フィルター」の要素だったのでしょう。ボイスコイルの振動のうち、高い周波数の部分を遮断し振動板外周部に伝えないように。
長々と書きましたが、以上を踏まえ勝手に想像するに、「プロF」振動板のリブは外周部に数本入っていることから、ウーハとしては比較的高い音域までできるだけ平坦な周波数特性を維持する(共振分散)とともに、広域端部のなだらかなロールオフを意図したものではないでしょうか。
筋金入りの単身赴任様
>日本製品ではダイヤトーンのP610には不等間隔で数本のリブがありました。
そうでしたか。やはり昔の名器と言われるモデルは、しっかりと検討されていたのですね。
>2S305のウーハだったpw125のリブはネック近傍に集中していました。カタログに言う「メカニカル(ローパス)フィルター」の要素だったのでしょう。
ローパスとして動作しているのであれば、それはおそらくリブではなくコルゲーションではないかと思います。
それ以外の手法では、ボイスコイルとネックの間にゴムリングを入れて機械的にハイカットするやり方もありましたね。確かに特性だけははっきりと効果があります。
>「プロF」振動板のリブは外周部に数本入っていることから、ウーハとしては比較的高い音域までできるだけ平坦な周波数特性を維持する(共振分散)とともに、広域端部のなだらかなロールオフを意図したものではないでしょうか。
はい、ご推察のとおりです。出来るだけピークの少ない素直な特性を目指しています。
PARC代表殿
大変詳しくご説明くださりありがとう存じます。また、当方の生半可な知識で生意気なことを申し上げ失礼いたしました。
高域(おまけに誤字も見逃していました)振動を遮断する目的であれば、リブで補強するのではなく、コルゲーションを入れて意図的に曲がりやすくするということは良くわかります。曲がりやすいコルゲーションを複数並べたコルゲーションエッジもあるくらいですので。
この関連で質問です。リブは部分的に振動版を厚くした物ですので、裏面はほぼ平坦なのでしょう。そうであればノンプレスでコーンを漉く工程でリブを成型することもできそうな気がします。他方、コルゲーションは表面ででっぱり、裏面でへこんで(逆の場合もあるかもしれませんが)曲がりやすくしてあると思われますので、ノンプレスでの成型は難しそうです。どのように成型するのでしょうか?
当て推量ですが、①プレスコーンとして一発成型 or ②一旦両面とも平滑なコーンを作り、プレスではさんで成型する、といったところでしょうか?(多分どちらもはずれていて、「コロンブスの卵」のような手法をご披露くださるのでは?)
筋金入りの単身赴任様
>コルゲーションは表面ででっぱり、裏面でへこんで(逆の場合もあるかもしれませんが)曲がりやすくしてあると思われますので、ノンプレスでの成型は難しそうです。どのように成型するのでしょうか?
コルゲーションは曲がりやすくというよりは、その部分でコンプライアンス成分を持たせるという感じかと思いますが、ノンプレスでの成形は難しいと思います。
またあえてノンプレスでコルゲーションにしたものを私はあまり見たことがないのですが、やるとしたらやはりプレスコーンになるかと思います。
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