ビクター、スピーカー事業部新年会

2011年03月09日(水)

こんばんは。今日は本来なら17cmコアキシャルの完成品システムのお知らせをする予定でしたが、先週からいろいろと別件でトラブルがあったりしてまだ少しかかりそうなので、今日は予定を変更して別のお話をしたいと思います。

 

先月、ビクターのスピーカー事業部の同志による新年会があり、それに参加してきました。「スピーカーズの集い」と題されたこの新年会は今年で3回目で、私は昨年お誘いを受けたのですが残念ながら業務の関係で出席できず、今年初めての参加となりました。

 

この会の最大の特徴は設計だけでなく、営業、製造、品質保証、資材、管理など事業部内の全てのセクションが対象ということで、いかにも家庭的なビクターらしい会です。この辺は、ソニーとはちょっと雰囲気が違いますね。

そう言えば、私はビクター、ソニーという同じAV関連企業に勤務していましたが、今から思えばこの2つの会社はいろんな点で対照的なところがありました。

 

例えば、製造部門に関してはビクターは社内にあったのに対し、ソニーは基本的に子会社でした。そのためビクターは製造と設計は基本的に対等で、実際のところは製造にこわ~いベテランがいて、変な設計をするとよく怒鳴られたものです。私も新人時代に製造の課長に頭をどつかれたことがあったりします。(笑)

 

最初、製造系の会社とはこんなものかと思っていましたが、ソニーに入社してみると随分雰囲気が違っており、ソニーでは設計から製造に指示を出して製品を流すといった感じで、製造に怒鳴られたというような記憶は私にはありません。

まぁこれはどちらがいいと簡単に言えるものではありませんが、ソニーのような他社がやらないような新しいことや複雑なものを流すためには、やはりこういう組織の方が向いているのかも知れません。四角い平板スピーカーのAPMなどは、先ずビクターでは製造に「こんなもん、流せるか! 何考えてんだ!」と一喝されて終わりでしょうね。(笑)

でもビクターの製造のすごいところは、本当に良いと納得すれば、3点接着法などのように非常に生産性の悪いものや、海外製の超使い難い接着剤なども文句を言いながらもしっかり対応してくれる点で、やはりプロ意識を感じます。(ちょっと怖いですけどねぇ)

 

この製造と設計の関係の違いは、資材や管理部門と設計の関係も同じで、正直言ってビクターは本当に怖かったですね。ベテランエンジニアでも資材で怒鳴られるなんていうのはしょっちゅうあって、社会人というのは本当に大変だなぁと当時つくづく思ったものです。私もよく怒られました。(笑)

それに比べると、ソニーはほんと天国でしたね。まず怒鳴るなどということはなく、みんな紳士的な方が多かったと思います。私見ではありますが、当時はソニー全体に技術(設計)あってのソニーというのが浸透していて、設計者は本当にやりやすい環境だったと思います。予算も多かったですし。ソニー入社当時、ビクターの時の感じでひたすら低姿勢で「何とかこの部品を手配してほしいんですが・・」などと資材に相談に行くと、「了解です。何か要望があればどんどん言ってください。」というような感じで、本当にびっくりしたものです。ほんと同じ業界かと・・・・。まぁ別の言い方をすれば、ビクターの方がより緊張感を持っていい仕事ができるとも言えますが。

 

もう1点大きな違いとしては、人事制度がありますね。これも両社は対照的でした。ソニーですごいのは社内募集制度という独自の制度があって、これは人材を欲しい部署が自由に社内で募集を行い、それに対して希望者は所属している上司に内緒で自由に応募が出来るというものです。さらにこの制度が凄いのが、最終的に異動が決まるまでは元の所属上司には一切人事からも知らせずに採用が決まることで、所属上司には全てが決まった後で人事から報告が入ります。この時点では既にこの異動は決定事項で、所属部署はこの異動を拒否できないという徹底ぶりなのです。こんな制度はまず普通の会社ではなかなかないと思います。実を言うと、私がオーディオ事業部から研究所に異動したのもこの制度を利用してのものでした。当時も直属の課長は本当に驚いていましたねぇ。この課長には迷惑をかけたと今でも思っています。ただ結果として、研究所でその後プロ用ドライバーの開発など、しっかり結果を出したつもりなので、ソニーとしては良かったのではと思っていますが。

 

それに比べるとビクターの人事制度は多くの会社と同じように、一度配属された部署から他の部署への異動は本当に大変(というか殆ど無理)といった感じで、結果としてベテラン技術者が同じ部署で育つというメリットもあったりします。特にスピーカーの場合は、経験がかなり効くカテゴリーなので、ソニーの人事制度は結果としてはスピーカーにはベストではないとも言えます。私がいた当時も、先輩のエンジニアがどんどん他部署に異動していなくなって、気がついたらいつの間にか私が一番ベテランになっていたという感じでしたから。ビクターでは考えられないことです。

 

 

 

だいぶ話がそれてしまいましたが、肝心の新年会は大盛況で、何十年ぶりかで沢山の懐かしい方とお会いすることができました。人のことは言えませんが、正直当時とは外観が変わられて最初どなたか全く分からない方もいらっしゃいましたが、不思議なもので声を聞いた瞬間、あああの方だと分かる感じで、この辺はスピーカー屋の性かも知れません。(笑)

話によれば、ビクターも状況はあまりよくないようで、55歳以上の人はほとんど会社に残れないような感じで、スピーカー関連の人も私より上の方は全員退社されたようでした。ほんとこれからオーディオ業界はどうなるのか、ちょっと寂しい気分になりました。

 

退職された方も沢山来られていましたが、驚いたのは私のように起業して何かをやろうとされている方が殆どいないことで、これはソニーとは本当に対照的です。ソニーの場合、オーディオ関連だけで私が知っているだけでも五指に余る感じで、私もあまり抵抗無く、普通に今の会社を始めたのですが、今から思うとやはり無鉄砲だったのかも知れません。まぁこの辺もソニーの社風が効いているのかも・・・・・。

 

さて今日はだらだらと書いてしまいましたが、次回は今度こそコアキシャルの完成品システムのお知らせをしたいと思います。(今週中には何とかできればいいのですが)

この記事へのコメント

GX333+25 2011.3.11

PARC 様

 両社の「社風」の違い、本当に興味深く感じました。そういう観点から、販売店に置いてある商品を眺めてみると、また違った見え方がするかもしれません。

 さて、実は今日、情報セクションの専門家と久しぶりに電話で話したのですが、私のところでも身分証明書としてICカードを既に使っていますが、この4月にさらに更新して新機能を付加、いわゆる「ワン・ストップ・サービス」にまた一歩近づこう、という話でした。

 その時、話が及んだのが、身分証明書のICカードが「フェリカ」だという点でした。

 もう十数年前、インターネットが爆発的に普及を開始した頃、ちょっとした本を仲間と作ったことがあります。当然、そこでは電子マネーも議論になったのですが、そこを担当した人は「結局、決済手段の電子化はセキュリティなどから難しく、決済方法の指示の電子化(デビット・カード)で十分ではないか」とアメリカでの議論などを参照しつつ結論づけたのでした。つまり、IBMをはじめとするそうそうたる大企業が、何億円もの決済も可能なようにと作り上げた電子マネーは、がちがちのセキュリティで使い勝手が悪く、使いものにならずに全部失敗、という経験の後だけに、そう結論づけて「電子マネー」をめぐる議論は実質的に終結した、と言い切ったのでした。

 しかし、ご承知の通り、それをすべてひっくり返したのがフェリカだったわけです。非接触型というのも目の付け所が良かったと思います。みんなパスケースから取り出すこともなく、改札口やレジのところでポン、パンという感じで軽くタッチしてOKという手軽なハードウェアもなかなかだと。しかし、それより凄いのは、5万円上限という少額決済に限定することでセキュリティを緩くして、電車の改札口を通過する間に認証と精算と表示を済ませる、そんなソフトウェアをも持つことで、誰でも簡単に、なくしても大騒動ではなく、駅の窓口ですぐ止めてもらえるし、大損害にまではならない。しかも、スピーディで便利、結局、みんなが使い易いからどんどん発行されてカードそのものも読み取り機もどんどん安くなって……というプロセスで、今や日本は電子マネー天国、という話になりました。

「結局、すごいのは、そういう逆転の発想を編み出してくるってソニーの技術陣の力だよねぇ」というのが、電話の相手方のIT専門家と私の一致した結論でした。そのおこぼれで私らのような所帯でも「ワン・ストップ・サービス」提供へまた一歩近づけるんだねぇ――――話は尽きませんでしたが、やはりそういう発想を生み出す一助も「社風」なる摩訶不思議な存在あってのことなのでしょうか。

 長話になりましたが、ちょうど先程そんな話をしているところに代表のブログでの「社風」論を拝見したので、つい書いてしまいました。

parc 2011.3.13

GX333+25様

長文のコメントありがとうございました。フェリカと言えば、業務用スピーカーをやっている時の先輩が異動後にこれの開発をやられていましたね。ちなみにその先輩も今は退職して起業されています。

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