試聴用CD

2008年11月04日(火)

こんばんは。

今日は以前から質問のあった私の試聴用CDについて、少しご紹介をしたいと思います。ここで最初にお話しておきたいのは、試聴用とデモ用は違うということです。もちろん両方に使えるソフトもありますが、一般に試聴用ではそのスピーカーの性能をチェックするために使用するので当然いやらしい(厳しい)ソフトもありますが、デモ用ではいかにそのスピーカーの良さをアピールできるかということを最優先に選ぶということです。そのため、デモ用についてはデモするスピーカーやその日の環境によってソフトを変えたりすることもあります。この辺はまたいずれお話しますね。

それともう一つ強調しておきたいのは、下記の条件はあくまで私の個人的な考えであって、全く違う考え方もあるということです。あくまで参考として見ていただければと思います。


では私が仕事で使う試聴ソフトについてどのような基準で選んでいるかですが、条件はだいたい下記のようになります。

0)録音が良いこと。
 視聴用のソフトなので、これは基本ですね。あまりに当たり前のことで、書くのを忘れてました。曲や演奏は最高なのに、録音がイマイチで視聴用に使えないソフトが意外に多いことには結構困ります。

1)無駄な
前奏が短いこと。
 ユニットの試聴というのは、かなり完成度の低い状態から細かい仕様変更等を比較試聴したりすることになるので、曲の頭から欲しい音が始まるのが理想です。この無駄な前奏というのは、決して音楽的に無駄という意味ではありません。あくまで仕事の道具として使う場合、必要な音源が入っていない前奏の部分という意味です。

趣味でやる分には時間は基本的にエンドレスなので、この条件は不要ですが、プロとしてやる場合どうしても時間は有限であり、いかに短時間で効率よく音を確認できるかが非常に重要となります。


2)出来るだけ
低域から高域までバランスよく音が入っていること。
 これは当然のことですよね。特に時間が無くて、あまり多くのソフトを聴いている時間が無い場合はこの条件は重要で、極論すればこの1枚だけでチェックしておけば大ハズレはしないといったようなソフトは貴重です。

え~、たった1枚で音を決めるの~? と思われる方も多いかと思いますが、例えば展示会等で細かく確認をしている時間がなく、ほんと数分でセッティングを決めなければならない時とか、今日中に仕様を決めないと量産に間に合わないとかいったシチュエーションは量産設計をやっていれば一度や二度ではすまないはずなのです。
まぁ実際は1枚だけということはないにしても、かなり少数のソフトで決めるということはよくあります。


3)
良質な人の声が入っていること。(男女両方入っていればベスト)
 前にもお話したことがありますが、人間は人の声に非常に敏感です。例えば、音なんか全く興味がない小さな子供さんでも、お母さんの声を聞いて鼻声だったりすると一発で分かりますよね。またお母さんの声と他人の声を間違える子供もいないでしょう。

 でもこれらの差をスピーカーで一般に使っている周波数特性なんていうレベルで話をすれば、どれも大差ないっていうことになるでしょう。それだけ人の耳は声に対して敏感なんだと私は思っています。

 そのため、私は試聴評価をする時、先ずは声を一番最初に確認します。経験的に言って、人の声をまともに再生できないスピーカーはまずNGと思って間違いありません。ちなみに、ソニー時代あのMさんはマイクで自分の声を再生しながらスピーカーの評価をやっていました。さすがに私はこの手法はできませんでしたが、基本的な思いは同じだと思います。

 人の声の帯域はたかが何オクターブで、楽器に比べれば狭いとおっしゃる方もいますが、私はそうは思いません。声の倍音成分をちゃんと再生するにはそれなりに広帯域が必要ですし、実際にボーカルだけのソフトでトゥイーターの有無で音を聴けば一目瞭然だと思います。


4)
自分が音楽的に好きなソフトであること。
 
(ただし一番好きなソフトは通常は外す)

 この項目はかなり個人的な事なのですが、やはり仕事で音を聴くといっても自分自身が楽しいと思えるような音楽でないと、ずっと同じソフトを聴いているのは結構しんどいので、これも私にとっては重要です。ただし、本当に一番好きなソフトは基本的には使いません。使うとしても本当に最終チェックでちょっと聴くという程度です。

理由は、若い頃に本当に自分の愛聴盤を仕事で使っていて、たまたまその時自分のユニットがトラブルになり、その後プライベートでもその曲を聴くとその時の嫌な事が思い出されるという経験があったためです。実際、当時街を歩いている時にその曲が聴こえてきただけで胃が痛くなったことがありました。(^^;



まぁこれ以外にも細かいことはありますが、先ずは上記の4点をクリアしていれば、一応私のテストCDの候補リストには入ることになります。では具体的に代表的なものを下記にご紹介します。




ジェニファ ウォーンズのハンター。これは定番中の定番ですので、ご存知の方も多いでしょうね。私は、2曲目(Somewhere, Somebody )をよく使います。この曲は、短い前奏の中でベース、ドラム、シンバルが入っていて低域~高域のバランスチェックを短時間でラフにするには非常に楽です。またその後で続くボーカルのバランスも良く、後半はジェニファの女性ボーカルに男性ボーカルもからんできて、本当にチェック用としてはお勧めです。もちろん、曲も悪くはないですよ。

ただ、1曲目のRock You Gently はかなり低域が入っているので、あまり低域が延びていないモデルの試聴やデモには向きません。特に小口径で聴くとかなりなさけないことになってしまいますのでご注意を。

ちなみに私が個人的に一番好きな彼女の曲は、ジョーコッカーとのデュエットで歌った映画「愛と青春の旅立ちのテーマ曲です。

2枚目のディスクは、今は亡きソウルの大御所レイチャールズの遺作となったGenius Loves 永遠の愛。このアルバムの中で、彼はいろいろなアーティストとデュエットで歌っていて、1枚でいろいろなパターンを聴くことが出来ます。私が主に使っているのは、ナタリーコールと歌っている5曲目のFever。この曲も、全体に音のバランスチェックには最適で、後半のナタリーコールの女性ボーカルを含め、ボーカルチェックにも向いています。ただし、彼の声はちょっとクセが強いので、私はデモではこれはあまり使用しません。
さてちょっと長くなったので、今日はこの辺で。続きは次回に。

この記事へのコメント

GX333+25 2008.11.5

人の声、ですかぁ……
PARC 様

 中国シリーズが思いの外長引いている内に風邪を引いてしまいました。ごほんごほん(でも、もう抜けましたけど)。ただ、なんでも、「秋の花粉症」とダブルパンチの方もいらっしゃるそうなので、皆様もくれぐれもお気をつけください。特に、ハコづくり、ぬりぬりとノドや鼻にはよろしくない作業がわんさとあるとなおさらです。

 医者によると、そういうことをやると、ノドや鼻のところの扉や錠前を緩めたり壊したりすることになって、風邪を引きやすくなるんだそうです。

 さて本題ですが、試聴用の音源の件、興味深く拝見しました。そういえば、写真もビデオも最後は人肌でチェックしますから、人の使うものは人の使うものでチェック、というのが定石なのでしょうね。

 しかし、人の声といえば、かつて「プラチナの低音」と言われた城卓也さんを思い出しますが、あの方の「機長アナウンス」などは、試聴用にはどうなんでしょうね?

「聞き惚れてしまって試聴にならなかった」じゃ、シャレにならないんですが。

さすらいのあめおとこ 2008.11.5

FEVER
お待ちしてました^^
実はレイチャールズとナタリーコールの『FEVER』は大好きで、ちょこちょこ聴いてます。
特に『FEVER』のナタリーコールのボーカルがウッドコーンで聴くとまさにフィーバーしつつ、でもきつくならずやたらよくて

ジェニファーウォーンズのハンターもチェックしてみます

PARC 2008.11.5

Unknown
GX333+25様

>人の使うものは人の使うものでチェック、というのが定石なのでしょうね。

そう言えば、吸音材なんかも肌にすりすりして気持ちのいいのが音も良かったりしますね。

PARC 2008.11.5

Unknown
さすらいのあめおとこ様

>特に『FEVER』のナタリーコールのボーカルがウッドコーンで聴くとまさにフィーバーしつつ、でもきつくならずやたらよくて

このナタリーコールのパートって、スピーカーによっては結構厳しいソースになることがあり、試聴用ではいいのですが、デモ用では要チェックソフトですね。(笑)

展示会なんかでのデモはほんとうに一発勝負なので、ちょっとでもリスクがあるソフトは出来るだけ使わないようにしています。「いやここの部分はソフトがそういう音なんですよ」なんていちいち言い訳するわけにはいかないので・・・。(^^;

GX333+25 2008.11.9

ただいま広州滞在中
PARC 様

 いつぞやブログでお話なさっていた広州にいます。とにかく暑いです。暑さが苦手な人間には辛い! としか言いようがありませんです、はい。

ところで、

>そう言えば、吸音材なんかも肌にすりすりして気持
>ちのいいのが音も良かったりしますね

とのこと、なるほどPARC様の吸音材がウールにこだわっていることがよく理解できますが、同じ蛋白質起源ということでは「真綿」ってのがありますよね。

 あれも「すりすり」すると、とても気持ちがいいのですが、あれを吸音材にしたらどうなんでしょう。子どもの時分は、家業が和裁だったものですから、周辺にふんだんにあって「すりすり」して、とても気持ちが良かったことをよく覚えています。

 むろん、首を絞めちゃいけませんけどね(あたりまえか)。

ヨッシー 2008.11.9

表題とは関係ないのですが
初めまして、PARC様。

トネゲンを検索していたらたまたまPARC様の4月30日のブログに遭遇しました。

私がかつて所属していた会社はそんな評価だったんですね。私は主に海外のメーカー担当だったのでPARC様とはおそらく面識がなかろうかと思います(国内ではJBLと関連のハーマンぐらい)。私はその某大手メーカーに吸収合併された年にトネゲンを退社したのですが。合併という経営陣の判断がはたして正しかったのか…。

なつかしさで思わずよしなしごとを綴ってしまいましたことお許しください。
ではお邪魔しました。

PARC 2008.11.9

Unknown
GX333+25様

今度は広州ですか。広い中国をかけめぐり大変ですね。お体にはくれぐれもお気をつけください。

経験的に言えば、天然ものの素材はだいたい音は良いと思いますね。なかなか理屈ではうまく説明ができないのですが、音の世界は奥が深いですね。

PARC 2008.11.9

Unknown
ヨッシー様

>合併という経営陣の判断がはたして正しかったのか…。

少なくともユーザーとしての率直な感想を言わせていただければ、あまり賢い選択ではなかったように思います。合併によってトネゲンの持っていた良さは完全に無くなったような印象を持ちましたので。いい会社だったのに残念です。

またこのブログにも遊びに来ていただければ幸いです。

PARC 2008.11.10

Unknown
視聴用ソフトの選択基準で一番重要な録音の良さというのを書き忘れてました。(^^;
基本中の基本ということで、0番とさせていただきました。

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